覆面時事座談会 2011.4.3

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)ってなに?

シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの、お互いを補い合う「ほほえましい協定」に、どういうわけかアメリカが割り込んできて、TPPの様相は一変。「農業VS輸出産業の構図」や「日本孤立化の危機」ばかりが強調される今の日本の論調では、アメリカの世界戦略の一環としてのTPPの深刻さを、見失うのではないでしょうか。

■TPP問題のとらえ方

消費者 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)ってテレビで議論が対立しているみたいですけど、そもそもTPPって何ですか?まず先生から説明を簡単にしてもらって良いですか。
研究者 どういうふうに勉強するかという時に、TPPというのは、1.どのような分野にわたる問題なのかということがあって、2.それぞれの分野に対して、関税なのか、非関税なのか、規制緩和なのか、どのような措置を通じて、3.どのような問題が発生するのか。4.私たちはそれをどのような評価基準に基づいて評価するのか。その4つのことが大切なことではないかと思いますね。
栄養士E TPPって農業分野だけぐらいに思っていたのですが、24項目にもわたる分野で検討されているのですね。
研究者 ところがその24分野、日本の現在の政府高官でも丁寧には説明しきれない。今、9カ国(シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシア)で話し合いを積み重ねている段階だから、どう具体化して提案されるのかわからないところがいっぱいある状況です。
 それと、今「農業問題だと思った」と言われたように、一面的な見方をしないようにしなければならない。「経済問題」だけでなく、「政治的」「軍事的」な問題も見ておかなければならない。
 それから、「経済問題」の中でも、「農業問題」だけでなく「産業全般にわたる問題」だし「生活一般にわたる問題」でもあるという捉え方をしておかなければいけないと思うのです。

■アメリカのねらい

生産者 ちょっと話が飛ぶかもしれませんが、アメリカが「例外なき関税撤廃」と言いながら、「乳製品と砂糖はダメよ」って言いましたけど、やっぱり自分たちの国の利益を守るという論理ですよね。
研究者 「アメリカが自国の利益を守ろうとしているのではないか」という点については、三つの懸念が言えると思うのですよ。
 一つは、本当にフェアな話し合いができるかという問題ですね。「自分ところの利益を守るだけではないか」という懸念。二つ目は、仮にニュージーランドから乳製品を、オーストラリアから牛肉を輸入しても、それを玉突きで日本に輸出すれば、アメリカにとっては致命的にはならないのではないかという「玉突き貿易」ですね。
生産者 なるほどそういうことですか。
研究者 そしてもう一つは、アメリカから見ると、日本のTPPへの参加は欠かせない。だから日本もエクスキューズでお米だけは許してもらえるのではないかという話です。
 この問題は、1.「フェアな話し合いにならないのではないか」ということと、2.「玉突き貿易」と、3.「お米とか、いくつかのものは勘弁してもらえるのではないか」というところが、ミックスした話ですね。
消費者 なぜ、アメリカは「玉突き貿易」をするのですか。
研究者 アメリカ自身が乳製品、牛肉、お砂糖については競争力を持っていないのですよ。乳製品はニュージーランドに負けるし、牛肉はオーストラリアに負ける。だから、他の国には「例外なき関税撤廃」と言いながら、牛肉と乳製品と砂糖だけは、「例外」として守ろうとしている。そういうふうに考えられていたのです。
消費者 その品目については「関税を取っ払わないよ」ということですか。
研究者 そうそう。そういうふうに理解してきたのだけれど、どうも「玉突き貿易」で、日本へ売りつけようとしているらしいという話です。
消費者 はあ、アメリカが輸入しても、国内には入れないで日本に輸出する。
研究者 国内に入れてもかまわないのですけど、押し出された部分を日本に輸出する。日本の方がもっと競争力がないわけだから可能だということです。
生産者 日本が余剰農産物のはけ口ということですか。
消費者 でも日本だって、関税撤廃の対象候補から外してもらった方が日本の砂糖も牛乳も守れるわけでしょう。
研究者 外してもらったら良いですけど、だけど「例外なき関税撤廃」だからね。

次のページへ
page 1/7