2016.2

TPP協定で食の安全・安心はどうなる
ーその体系的整理の試みー


U 分野別にみた食の安全性の点検

1.成長ホルモン剤(エストラジオール、エストラゲン、ゼラノール)ならびに
  多くの抗生物質の多用→ 発がん性リスク
  国内では使用禁止、輸入はオーケー

 アメリカでは肉牛を効率よく育てるために成長ホルモン剤を使用することが許されている。アメリカでは乳牛にも成長ホルモン剤が使用されているので、米国産のチーズ、バター等の乳製品が輸入されており、以下のような同様の問題を想定しておかなければならない。
 日本、EUではこうしたホルモン剤の使用は禁止されている。しかしおかしなことに日本はホルモン剤を投与された牛の輸入は認められている。EUは1989年以降、成長ホルモン剤を使用した米国産牛の輸入を禁止している。米国は、EUの農産物に課徴金をかけて報復したが、それでもEUは禁止措置を解いていない。
 オーストラリアは使い分けていて、EUに売るときは禁止されているから成長ホルモンを使わない、日本に売るときはオーケーだから特別な場合を除き成長ホルモンを使用している。
コーデックスは1995年7月の総会で、賛成33、反対29、棄権7で決着
 米国、1995年にEUを告訴、1997年パネル、1998年上級委員会でEUの主張する予防原則は退けられた。しかしEUはその後もホルモン牛の輸入を禁止
 北海道対がん協会細胞診センター所長の藤田博正医師の計測
 「数年前、札幌市内のスーパーで無作為に牛肉を買い集め、残留ホルモンの濃度を計測」、その結果、「米国産牛肉には」、国産に比べると赤身で600倍、脂身で140倍のエストラゲン(女性ホルモン)が含まれていた。ハンバーガーの肉では、水分が抜けているためか、さらに高い値が検出された」。エストラゲンは、乳がんや子宮対がん、前立腺がんなどの「ホルモン依存性がんの危険因子である。
 1960年代との比較でみると、牛肉の消費量が5倍に増え(米国産牛肉の割合は25%)、ホルモン依存性がんの発生率も5倍になっている。「つまり、米国産牛肉の消費増大とホルモン依存性がん発生率との間に正の相関があることが推測できる。これがわれわれの導き出した結論です」
 2010年、英国の医学誌『BMJ』に、「成長ホルモンを使用した牛肉の輸入を禁じた翌年を境に、ヨーロッパ30カ国の乳がん死亡率が一斉に低下した(20年間)」という興味深い論文が掲載された。1989−2006年の間の低下率はイギリスの北アイルランドで29%、オランダで25%、ノルウエーで24%などとなっている。
 乳牛の遺伝子組み換え成長ホルモン(モンサント社が開発した乳牛の遺伝子組み換え成長ホルモンrbST、乳量を20%以上を増加させるが乳牛は数年でと殺)も大問題。前立腺がんの発現率4倍、女性の乳がんの発現率7倍という論文がは大擁されている。日本、ヨーロッパやカナダでは禁止されている。しかし認可されていない日本だが、米国からの輸入によってrbST使用乳は港を素通りして、消費者は知らずにそれを食べているというのが実態。アメリカでさえ、今や危険ということでスターバック、ウオルマートも「使っていない」と表示して販売している。
 ラクトバミン、成長促進剤としての作用があり、牛や豚の飼料添加物としてアメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリアなどで広く使用されている。ラクトバミンは、吐き気、めまい、手が震えるなどの中毒症状を起こし、とくに心臓病や高血圧の患者への影響が大きく長期にわたり摂取すれば染色体の変異をもたらし、悪性腫瘍を誘発するとの指摘もある。EU、中国、ロシアでは使用禁止。日本では、国内での使用を認めておらず、輸入肉につては残留基準値を設定しているものの、検査は省略されている。
 家畜が工場でなく農場で育てられていた1950年代には、家畜に投与された抗生物質は年間230万トンだった。2005年には約80倍の1万8000トンに増加している。


2.食品添加物
ポストハーベスト農薬は米国では農薬、日本では食品添加物として取り扱われている。
食品添加物→ わが国で認可されていない2200種類の食品添加物が押し寄せてくる
食品添加物→ 3000種類(アメリカ)− 800種類(日本)=2200種類+α(新たに押し寄せてくる添加物)
 食品の風味や外形を整えるために使用されている食品添加物は、日本では800種類、米国では約3000種類。TPPに参加すれば認可されていない2200種類すべての食品添加物を認めさせる腹積もりでしょう。「米国では逐一、国の認可を求めずとも、企業が届け出るだけで新種の添加物の使用が可能です。被害が発生しない限り行政側からとがめられることはありません」という状態なのです。アメリカでは企業が届け出て、手順をふみさえすれば、新種の添加物の使用が可能で、消費者が被害を訴えない限り、規制されることがない。
 使用されている食品添加物のうち指定食品添加物は2013年現在438品目に達している(10年前には400品目にも満たなかった)。
 今回、TPP協定でとくに問題なのは、「未指定の国際汎用添加物について原則としておおむね1年以内にわが国の食品添加物として認めることとした2012年の閣議決定を誠実に実施する」ことが盛り込まれた点である。現在の未指定の国際汎用添加物の4品目は以下のものである。
 アルミノケイ酸ナトリウム       固結防止剤
 ケイ酸アルミニウムカルシウム     固結防止剤
 カルミン               着色剤
 酸性リン酸アルミニウムナトリウム   膨張剤
 4品目の共通点はアルミニウムを含有している点である。このアルミニウムについては、2006年のFAO、WHOの合同食品添加物専門家会議で新たな危険性が判明し、基準値を大幅に引き下げたという経過があるわけで、TPP協定はこうした流れに逆行するものといえる。

3.防カビ剤(OPP、TBZ)→ 米国産(カリフォルニア)オレンジ
  Vの3「日米並行協議における食の安全性についての協議」を参照

 そもそも日本では、収穫した農産物に農薬をかけることは禁止されている。しかし、アメリカからの輸入途上でカビが生えないように農薬をかけなければならない。これを認めるために無理やり「農薬」を「食品添加物」に分類して対応することにしている。しかし食品添加物に分類すると、今度は食品パッケージにその旨を書き込まなければならない。同じ農薬が、収穫善は農薬、収穫後は食品添加物として2度の安全性評価を強いられている。これがアメリカからの輸入食品の販売を不利にするとして、防かび剤などの食品添加物としての審査をやめるよう要求され、やめるということになりました。しかし、表示まで辞めるということにはなっていなかった。しかしそれを、今回の政府が公表した付属文書では、並行交渉の結果として衛生植物検疫(SPS)関連で、「認識の一致をみた」ということでポストハーベスト農薬に関しては表示もされないということになったわけです。

1)柑橘類の場合
 カリフォルニア産オレンジ、輸入自由化されてから22年、わが国の年間輸入量は13万トン、その75%は米国産。収穫後2週間かけてはるばる日本に届いているにもかかわらず、まったく腐る気配はない。それはなぜか、「それはポストハーベスト農薬が使用されているからなのです」。
 ポストハーベスト農薬とは、収穫後に使用する農薬のこと、わが国では認められていない。
 米国産オレンジの果皮に塗られている防カビ剤、OPP(オルトフェノール)、TBZ(チアベンダがあるとされている。そのために約40年前には、当時の厚生省がOPPなどを使用したかんきつ類の輸入を自粛するように警告していた。現在では防カビ剤は食品添加物と名称を変えて、すっかり市民権を得ている。なぜ防カビ剤が食品添加物?
 1975年、米国産グレープフルーツからOPPが検出された。このとき厚生省は一部を破棄したのですが、それを知った米国が激怒して日本にOPP使用の容認を強硬に要求してきました。日本は苦肉の策でこれを食品添加物として認可してしまったのです。目下のところ、国内企業がOPPを食品添加物として使用した企業は見当たりませんので、やはり米国産かんきつ類を輸入するためだけの方便だったことになります。
 日本国内では、食品添加物の表示が義務付けられています。米国から輸入されたオレンジの段ボールにはOPPやTBZといった防カビ剤使用の表示があります。しかし、スーパーでばら売りされているものには表示義務はありませんので、当然のことながら何も書かれていません。

2)汚染米の場合(天然発がん性物質)
 2008年に発覚した「汚染米転売事件」、この事件は米の加工会社「三笠フーズ」が糊の原料などにする工業用米を偽って食用に転売していたというもの。「この中にカビが生え、猛毒のアフラトキシンに汚染された米があったから事件になったのですが、それらはアメリカなどからの輸入米だったのです」(米国産米=カリフォルニア米)。なぜ輸入米から汚染物質が出たのか、「アフラトキシンは、コウジカビのあるタイプのものは発生させる毒性物質。しかしこのカビは一定の湿度の元でしか発生しないため日本では生成しません。一方で、アメリカの穀物やナッツなどに生えることがあるのです。“地上最強”といわれるほどの毒性の強さで知られ、私たちは実験の際も、マスクやめがね、手袋着用で扱うようにしているくらいです」「この事件の後、ある業者が食用の輸入米を精製する差異におかしな塊を見つけ、農水省に届け出たところ、アフラトキシンが検出されました。検査がずさんだったので見逃されていたのです。これを機に、農水省はこれまでの半透明のビニール袋の外から見るだけだった検査体制を容器を開けてチェックするように変えたのです。するとそれまでの1年間で41件の検出だったものが、新しい検査を始めて2カ月で57件もの汚染米が検出されたのです」
 農林水産省の試算では、TPPに参加すれば、国内産米の9割が外国産米に置き換わることになるということですが、そうなりますと間違いなく検疫がまったく追いつかないということになります。

3)飼料用トウモロコシに発生するカビ(アフラトキシン)
  収穫されたトウモロコシを長期保存するとカビが生えてアフラトキシンが発生する。発がん性物質アフラトキンB1に汚染されたトウモロコシは検疫を潜り抜けて飼料となる。これが乳牛の体内でアフラトキシンM1に変換され、牛乳で検出されている。米国産トウモロコシを飼料に使用する限り、国産牛乳はアフラトキシンM1汚染のリスクから逃れられない。大量にポストハーベスト農薬を使えば、作物に農薬が高濃度に残留する。使わなければ、猛毒のアフラトキシンが発生し、国産牛乳が汚染されるの悪循環。
 米国からの主たる輸入農産物の残留農薬と汚染物質
 牛肉 過酢酸製剤(殺菌剤)牛丼に使われる腐りやすい米国産くず肉に使用
 豚肉・鶏肉 抗生物質耐性菌
 レモン 2.4D(除草剤、へたを落ちにくくし、保存期間を延ばす)
 オレンジ OPP(防かび剤)発がん性の恐れがある防かび剤
 グレープフルーツ TBZZ(防かび剤)OPPとの併用で発がん性が高まる。残留性が高い
 小麦 マラチオン(殺虫剤)環境ホルモンとして子供にさまざまな障害をもたらす
 大豆 臭化メチル(燻蒸剤)前立腺がんの危険因子。オゾン層を破壊するため、国際的に
    使用が禁止されている。しかし虫の発生を防ぐ燻蒸用途に関しては例外とされている。
 ジャガイモ IPC(発芽防止剤)主にポテトチップスなどの原料となる。猛毒があり日本
    はもともと残留基準値を0.05ppmとしていた。現在はWTOのSPS協定によりアメ
    リカに配慮して1000倍の50ppmに変更している。
 トウモロコシ アフラトキシン(かび)発がん性物質アフラトキシンB1に汚染されたト
    ウモロコシは検疫を潜り抜けて飼料となる。これが乳牛の体内でアフラトキシン
    M1に変換され、牛乳で検出されている。

4.大腸菌付着の冷凍食品→ 米国産冷凍食品
 冷凍フライドポテト、以前、米国産フライドポテトに大腸菌が発見されて送り返した。しかし、米通商代表部はこれに対して、「大腸菌の存在を理由に受け取りを拒否」と受け止め、アメリカの危険水準に基づいて「大腸菌検出は最小限で業界基準の限度内。加熱して油で調理すれば菌は除去できる」程度のものと反論。厚労省の関係者の説明は「簡単にいえば、日米間の規格基準の違い」「大腸菌の検出は輸送中の温度上昇が原因で菌が繁殖したためと考えられる。日本では冷凍食品の種類にもよりますが、大腸菌は陰性だけしか認められていないのに対して、アメリカの場合は菌の数が基準以下であればいいという違いなのです。アメリカは日本の規格がきびしすぎるとして、自国の基準を押し通そうとするのです」
  生鮮食品としてのジャガイモに関しては、関税ではなく、輸入そのものが規制されている。

5.BSE(牛海綿状脳症)の規制緩和はどのように進められたか(ならびに動物感染症の拡大)
1)わが国におけるBSE(牛海綿状脳症)の規制緩和
 輸入牛肉については、すでに2月に月齢制限を「20カ月月齢以下」から「30カ月月齢以下」へと大幅に緩和、さらに、2国間協議での「48カ月月齢」まで緩和する動きも取り沙汰されています。
2国間協議によるBSEの規制緩和の流れ
2000年BSE発生国産の牛肉の輸入禁止
2003年 米、カナダで感染牛を確認、輸入を禁止
2005年月齢20カ月以下の牛肉に限って輸入を再開
2011年厚生労働省、輸入規制の緩和を諮問
2012年10月22日食品安全委員会、BSEの規制緩和を厚労省に答申(「牛海綿状脳症の見直しにかかわる食品健康影響評価書」を答申)、輸入規制緩和へ輸入できる対象を現在の生後20カ月以下から30カ月以下に広げることを認める内容の答申(ほぼ100%に近い反対のPCを無視して)
11月06日厚生労働省の審議会、国内の食肉検査の免除と輸入を認める牛の月齢を現行の20カ月以下から30カ月以下に緩和する方針を了承(米牛肉問題決着) 
2013年02月01日厚生労働省、牛肉輸入に関するBSE対策を見直す通知を全国の検疫所に出し、輸入を認める米産牛肉の月齢を20カ月以下から30カ月以下に拡大に踏み切った。月齢拡大により、米産牛肉のほとんどが輸入対象となる。新たな米産牛肉の輸入は、2月後半にも始まる見通し。
04月01日それに合わせて国産牛の検査対象を30カ月齢に緩和
07月01日12年近くつづいてきたBSE(牛海綿状脳症)の全頭検査が全国一斉に終了。これまでわが国では、月齢に関係なく出荷するすべての牛肉について自治体によって安全性を確保するために「全頭検査」を実施してきた。その全頭検査に費用の国による補助打ち切られた。生後48カ月超の高齢の牛の検査は今後も続く
*国内の大半の肉用牛は21〜31カ月で出荷される。

 厚生労働省から独立した「食品安全委員会」が危険性などを審査しているが、米側は委員会が不当な障壁になっていないかと問題視しています。さらにゼラチン、コラーゲンの輸入自由化を
求めてきている。
2)米韓FTAによって韓国の米産牛肉の輸入はどうなったか 
   米韓FTAでは米国産牛肉の輸入衛生条件は、「30カ月以上の米国産牛肉も、安全性を認めて輸入を許可する」と書き込まれた。この記述の意味するところは以下のとおりである。
 これによると、米国産牛肉を受け入れたときから安全性について認めたことになり、それを輸入禁止にできるのは、米国の輸出業者による自主規制でしかなく、それはなんらの衛生検疫である。要するに、米国産牛肉輸入業者が「安全である」といえば、それ以上検査することもできなければ、輸入を禁止することもできないということ。注意しなければならないのは、「この条件はBSEが発生した場合でも適用されるということだ。さらに、ISD条項を楯に韓国の輸入禁止措置はいとも簡単に突破されてしまうという点である。
 こうした懸念が現実となる事件が発生した。2012年4月24日、米農務省は「カリフォルニア州の月齢30カ月以上の乳牛1頭で、BSEの感染が確認された」と発表した。これに対して韓国内では、民主統合党や統合進歩党などの野党、市民団体などが、「米国産牛肉のBSE感染に対する憂慮が現実のものになった」として直ちに米国産牛肉の輸入の中断を政府に要求した。
 これに対して農林水産食品部の徐圭竜長官は、「アメリカから届いた第一次声明の資料を検討した結果、輸入は中止しない」と主張した。韓国政府が米国産牛肉の輸入中止に踏み切れない理由は、米国産牛肉の輸入中断措置を直接くだすには、国際獣疫事務局(OIE)がアメリカでBSE発生のリスクが高まっていることを正式に認め、アメリカによるBSE統制のランクを引き下げる必要があるが、OIEはもちろんアメリカ政府もBSEの危険を認めていないからだ。
 もしも、韓国が輸入中止措置をとった場合、逆にアメリカによるWTOに提訴され、韓国が敗れる可能性がある。韓国政府が輸入禁止に踏み切れなかったもう一つの理由は、それが、「まれに自然発生するBSEであって、感染の恐れなし」とされる可能性大との判断である。これまた人命軽視の対応と言わざるを得ない。
 以上、郭洋春「米韓FTAによる農業への影響」、『農業と経済』2013年9月号、76−78p
3)動物感染症の拡大
  2000年03月 口蹄疫、宮崎県で92年ぶりに発生
  2001年09月 日本で初めてBSE感染牛確認・発表
  2004年01月 山口県で鳥インフルエンザが79年ぶりに確認
         以降、毎年のように確認
  2009年04月〜新型豚インフルエンザ騒動
         鳥インフルエンザ・ウイルスの変化が活発化
  2010年05月〜06月 宮崎で口蹄疫発生


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