基調講演
  つぎに、「お米の消費」についてみています。ここはみなさん関心のあるところだと思います。まず、表5−1で示されている店頭で購入して家庭に持ち帰るもの。お米の消費はその他に、業務・外食用、それから農家の方が消費する分というふうに、3つに大きく分類することができます。これはもう大きく変化してきたんですけど、外食・中食事業者が440万トン、49%です。大体ごはんにいってしまうという消費の構成を見ますとね。で、一般消費者が300万トンで、33%。3分の1が一般消費者。残りの農家消費無償譲渡等が165万トンで、18%。これで100%になる。「業務・外食・昼食事業者」「一般消費者」そして「農家消費あるいは無償で譲渡する分」と。こういう3つのものによって構成されているのですが、現在すでに「外食・昼食事業者」が5割にせまっているという実態があります。
  この「家計調査年報」に出てくるのは、この一般消費者がお店で買って、あるいは生協で買ってもいいのですけれども、持ち帰って食に供するというものなんですけれども、これが一人当たりのところをみますと、最新の2007年(平成19年)で27キロですね。なかなかみなさん「わが家の一人当たり米の消費がどれだけか」を把握している人は少ないのではないかと思いますけれども、後ほどパネラーで出ていただく方のお話の中に出てくるのですが、その方は60キロぐらい食べているということになります。ですから、外食の少ない人は当然家計消費が多くなるわけですね。「お米の購入の最大の競争相手は何か」と言ったら外食なんですね。外食が減れば、家庭で買うお米が増えるわけですね。当たり前のことなんですけど。
  それで、今わが国のエンゲル係数はどの程度のものかわかりますでしょうかね。私たちの国のエンゲル係数は今現在25%なのです。全消費支出の中の食料支出の割合ですね、エンゲル係数。その食料支出の中のお米の占める割合というのは3.4%なんです。それに対して外食は18%です。外食の方が圧倒的に支出額としては大きいわけですね。お米が3万円ぐらいなのに対して、外食には16万5千円ぐらい支出している。最近のニュースを見ると「何をあなたは生活苦の中で何を一番節約したいと思いますか」そのトップ「外食」ですね。それが46%で、数日前のNHKの7時の朝のニュースでやっていましたけれども、ダントツで「外食で節約したい」46%ですね。
  お米の値段が下がって小麦の値段が上がって、パンの値段が上がって、だから米の消費が増えたという説明が一方にあります。お米の消費に大きな影響を及ぼしているのは、むしろ「暮らし向き」で、不況でお米の消費拡大が起こっているという側面の方が強いのではないかと私は考えています。価格の低下で消費拡大が起こっているというよりは、むしろ不況でお米の消費拡大がすすんでいるという「所得要因」の方が大きいのではないか。それは主として外食との代替関係ではないかと思っております。
  そういう意味で今日のテーマでもありますけれども、「おいしい」ということが非常に重要なんですね。「今晩どこかそこらでメシ食って帰るか」という時、「あ、わが家のあのおいしいご飯を」と思うかというところで、外食とわが家の食事が競争しているわけですね。そういう中で最近で言えば我が家のごはんの方が勝っているからお米の消費量が増えている。こういうふうに言えるかと思います。
  レジュメの8ページの最新のデータが見つかりましたので、2007年(平成19年)、世帯人員が3.14人と書き加えていただいて、世帯当たり購入数量が85.33kg、一人当たり購入数量が27.18kg、購入単価が精米1kg360円。ですからちょっと消費減退が止まっているのですね。2008年(平成20年)になるとさらに増えているかもわかりません。事故米の影響がどう響いているかということになりますが、そういうわけで、まあ若干外食との競争で勝っている。あるいはパンとの競争で米が勝っていると言えます。一人当たりの数値ですから「なんだこれっぽっち」と思うかもわからないですけど、それが1億2,000万人という数字になると非常に大きな数字になるわけです。ですから馬鹿にはできない。そういうお米の消費の実態があります。
  それで、強調しておきたいのはこのレジュメの8ページのところです。お米を食べなくなったということがあるのですけど、1976年(昭和51年)からみれば減っているのは明らかなのです。ただ「お米の主食という概念も、概念としても無意味になってしまったのか」という問いにどう答えるかですね。「5%の消費支出で23.3%の供給熱量」とて書いてありますけれども、大体そんなものでいいのですが、現在3.5%の消費支出で供給熱量の23.4%を占めているわけですね。ですから、これが主食の主食たるゆえんだと思うんですよ。たった3.5%の支出で供給熱量の23.4%を獲得しているわけですね。「これぞ主食なのではないか」と私は思うのですね。これは大変大切なことだと、ありがたいことだと思うわけです。
  ここでちょっと最近の新聞記事でおもしろいなと思った記事を、資料の5ページ資料5−1に切抜き取り上げておきました。これはなかなか、おもしろい数値だなと思いました。この「物価」と書いてあるのは、指定店の店頭価格からとられた「消費者物価指数」、「店頭価格」ですよね。それに対して実際家庭で買った、「実際の購入価格」との比較といっていいと思います。そうすると「店頭の価格」は1.9%。これは2008年(平成20年)1月から11月にかけての変化なんです。「店頭価格」1.9%の上昇を示したのに、「購入価格」は10.9%の低下を示している。
  「これはいったいどういうことなんだろうか」と、ちょっと知的な好奇心をくすぐられますけれども、このことが何を意味しているのでしょうか。
  一つには、「そういう安いお米がより容易に手に入る状態で身近に存在していること」を意味しているだろうと思います。
  二つには、店頭でより安いお米に購入が集中しているということ。 それから第三に、「なんとしても確保する必要がある」ということ。お米は買い控えるわけにはいかないということ。それがさらに面白いなと思ったのは、その傾向は子供服によく似ているというところが非常におもしろいなと思いました。買い控えるわけにはいかないというところが共通しているのです。その対極になるのがチーズだと思います。お米の消費の有り方として興味深いですね。
  レジュメの9ページのところに、なぜか「ワインとごはんの比較文考」というのが出てきます。なぜそのようなことを思いついたのかというと、十数年前にフランスを旅行した時に、田園地帯、田園じゃないですね、ぶどう畑地帯を歩いていて「あれ、ぶどうとお米って似ているなあ」というふうに思って、似ているところを書き上げてみたのが、1から8まであるのですが、今日の話題との関係ではもちろん最後の8のところですね。「ワインもお米も消費減退なんだ」ということですね。
  業務需要も含めた米全体の減少率でいえば、ワインよりもお米の消費減退の方が小さいのです。ワインの消費減退の方が大きいのですよ。家計消費だけ見ますとそうではないんです。逆なんですけどね。ここがおもしろいといいますか、そこに書いてありますのは、業務需要も含めた全部の消費量でいきますと、この20年間で17%の減少率なんです。ところが家計消費は41%の減少率なんです。
  それに対して、フランスのワインの消費減退というのは、同じ20年間に120リットルから90リットルですから、25%の減少率なんです。
  ですから日本のお米の消費の減少よりも、フランスにおけるワインの消費の減退の方が大きいということになります。
  「一体これはどういうことなんだ」と疑問に思いつつ、読んでいて「ああ、これかな」と思ったのが、麻井宇介さんの『ブドウ畑と食卓のあいだ』(中央文庫)という本なんですけど。麻井さんは数年前に亡くなっておられるのです。これは名著だと思いますけれども、そのなかにこういう記述があって「ああおもしろい。お米にはめ込めばいいや」と思いました。
  「文化の進展は異質の文化をとりこむ同化力の旺盛さに負うている。西洋料理がワインなしで食べられるようになった後には、西洋料理がもっともおいしく食べられるワインが登場するのであろう」   ワインの新しい文化、「文化の成熟」と言って良いかと思います。「西洋料理」のところを「食事」に、「ワイン」を「お米」とか「ご飯」に置き換えてみますと、
「文化の進展は異質の文化をとりこむ同化力の旺盛さに負うている。食事がご飯なしで食べられるようになった後には、食事がもっともおいしく食べられるご飯が登場するのであろう」
  置き換えるとこうなるんですね。
  今ご飯は、先ほど私は「主食の性格はちっとも変わっていないのではないか」ということで、数値を示しましたけど、お米の場合は「二極化」していると思うんですよ。「必需品的性格の持続性」ということはもちろんある。先ほどのように店頭に並んでいる価格よりも、買った価格の方が安いなんていうのは、やはり必需品的性格のあらわれだと思います。
  一方には「嗜好品的性格」がある。こだわったお米の買い方というものがあるから、「二極化」が進んでいるのではないかと思います。
  本当にワインと同じで、「新しいご飯の文化」というものを発展させていかなければいけないのではないかと思うんですね。そういうお米づくりをしなければいけないし、そういう売り方をしなければいけないし、そういう買い方をいなければいけないし、そういう料理の仕方をしなければいけないし、そういう食べ方をしていくことが非常に重要なのではないかなと思います。
  そういうわけで、消費拡大に何億円もお金を使っていて、決して悪いことではないんだけど、やはり「おいしいご飯」「おいしいお米」を供給するということが「キーポイント」だと思っています。
  そこで「日本型食生活」ということになるのですが、PFC比率一覧表を11ページ表5−3に掲げています。その事によって「日本型食生活」が守られて、そして長寿国世界一の日本がある。もちろん食生活だけで長寿になったわけではありませんけれども、その一端を担っている。そういう関係にあるのではないかと思います。
3.田んぼとお米
−面積、生産量、水−
5.お米の消費
8.水田農業の課題
―田んぼの未来、お米の未来―
9.おわりに
−滋賀県地産地消推進協議会になにを期待するか−