基調講演
  つぎに7ページに進みまして「お米の流通と価格」についてみています。このお米の流通というのは、事故、汚染米の発生のなんかで「大分複雑だなあ」とみなさん思われているかもわかりませんが、資料の6ページを見ていただくと実は極めて単純な、シンプルな流通機構になっております。資料の6ページの図4−1というのがありますが、一番左に生産者がいて、一番右に消費者がいる。その間に農協があったり、経済連があったり、全国出荷団体があったりで、そして卸、小売がある。それが、今度の食糧法の改正で、卸とか小売という堺が無くなってしまっていますので、ここは事業者とひとくくりにしております。多少政府が関与しているということもあります。
  非常にシンプルなわけで、ただ、農産物の特徴なんですけれども、この左端と右端のところの数が極端に多いという、農産物の特殊性があるわけですね。これは工業製品などと違って、生産者が多数いて、そして、消費者、国民全体が消費者ということで、多数の生産者と多数の消費者がいる。それを取り結んでいるのが流通業者ということになります。生産者の立場に立つと「買い手を見つける」ということは至難の業なんですね。しかし買ってくれる人を見つけない限り商品にならないわけですから、必死になって買い手を見つけなければならない。そういう、生産者の側から見れば、買い手を見つけてくれているのが小売屋さんだったり、卸売り屋さんだったり、農協さんだったりするということなんですね。
  生産者にとっては「買い手を見つける」ということは、至難の業であります。そういう意味では、みなさん「産直、産直」と言いますけども、日本全体の流通ということを考えますと、そういう全国区の流通業者がいてくれないと、生産者と消費者が結びつかないということになってしまうわけです。これは農産物流通の特殊性、農産物という商品の特殊性と言った方がいいかもしれません。供給が「原子的競争状態」に置かれている。あるいは消費者が「原子的競争状態」に置かれているということが、農産物の特殊性としてあるわけですね。
  それがどうして今回の汚染米のような複雑な流通経路になってしまったかということをみているのが、資料の14ページ、15ページです。すごい数の業者が関係していることがこの図6−5でもわかると思います。図6−3図6−4図6−5でもわかりますけれども、先に見たようなシンプルな市場がペーパーカンパニーも含めて、こんな複雑なことになっているわけです。届け出制なのに届け出さえしていないという業者まで存在しているという実態になってしまっています。このような実態を、「システムとしての乱脈」という言い方を私はしているのです。これに対して「物流としての乱脈」という問題がもう一つ、今回の事件には関係しているかと思います。しかし、ここでは時間の関係で、先ほどのようなシンプルな流通が、きわめて複雑な流通システムに変質しているという「システムとしての乱脈」にとどめておきたいと思います。しかし、主食用のお米のすべてがこういうことだということでは決してありません。部分的にこのように複雑化している。「なぜこんな複雑化が必要だったのか」とむしろ言った方がいいのかもわかりません。
  このように流通が変わってきたのは、1995年(平成7年)に「ミニマムアクセス米」を受け入れた。そして、1999年(平成11年)に「関税化」に踏み切った。それに沿って1995年、ミニマムアクセス米を受け入れたと同時に「食管法」を廃止して、現在の「食糧法」に切り替わって、業者の登録制にした。そして関税化に対応して、遅れて2004年(平成16年)に改正食糧法が施行されて、様々な大きな変化が起こるんですね。計画流通制度を廃止したとか、JA、全農による市場隔離対策を廃止したとか、政府の備蓄水準100万トンの設定とか、業者の届け出制とか、生産調整の数量管理への転換とか、集荷・卸・小売の業種区分の撤廃とか、業者の守るべき品質・品位の基準の廃止とか、業者に帳簿付けを確認する権限の喪失とか、複数原料米というブラックボックスの設定とか、売り渡しは御業者と同じ論理で行う「政府の業者化」が起こるとか。業者化したからには買う人がいれば売る。売れるものは売る。売れるから売るんだ。そして政府が「輸入米のセールスマン」と化したという。そういう流れがひとつあるわけです。
  それで、「お米の価格」ということですが、これは今回非常にわかりやすいデータを提供していただきました。農水省が今回たくさんの資料を出していただいて助かったのですが、資料の8ページ。図4−3平成18年産米のところを見ていただきますと、生産者の手取り価格があって、集出荷経費があって、それから卸の経費があって、小売経費があって、そして小売価格、消費者が買う値段がある。そして小売は諸経費で10%いただきます。卸も10%いただきます。集出荷経費は15%ですよ。ですから、店頭に並んでいるお米の値段を見たら、これで生産者の手取り価格がどの程度のものかということが、計算すればすぐにわかるわけです。ただ、ここで、白米と玄米の間に玄米を白米にする時に90%になります。このことだけが一つ加わりますけど、この4つのデータがあれば価格形成センターの価格からも、生産者がどれだけの手取り価格になるのかがわかりますし、店頭にどれくらいの価格で並んでいるのが妥当なのかということも、みなさんが電卓をちょんちょんとたたけば判断できます。そのためのデータを提供していただいていてずいぶん便利な表なのではないかと思います。
  先日発表された「農水省商品モニター調査」の結果によりますと、消費者の購入価格の中心は10kg3,250円。60キロに直しますと19,500円ですね。この10%、10%、15%、そして精米換算率90%というデータで、この消費者の購入価格の中心の3,250円だと、生産者の手取りが12,662円という数字が出てくるわけなんですね。これではやっぱり生産者は大変な経営、「経営大変だなあ」ということになります。そのことはレジュメの7ページ表4−1を見ていただきますと、生産費がどれだけ掛かって、販売価格がどれだけで、儲けがどれくらい出るのでしょうかということがわかるようにつくってみたのですが、これで見ていただくと、5ヘクタール以上のところで初めてプラスの利潤が、1俵あたり997円の利潤が出る。それまでは、5ヘクタール未満は、みんなマイナスの利潤しか計上することができないわけですね。5〜7ヘクタールの、平均的には5.722ヘクタールの人が初めてプラスの利潤を生み出せるのですが、しかし年間所得は276万円ぐらいしか所得をあげることができません。二人のお子さんを大学に行かせるにはとても生活をやっていけないという数値になっているわけですね。まあなんとか二人ぐらいの子どもを大学に行かせられるのは、15ヘクタール以上層、具体的には24ヘクタール以上の作付面積規模でようやく、1,400万円を超える所得になるということを読み取っていただけると思います。
3.田んぼとお米
−面積、生産量、水−
4.お米の流通と価格
8.水田農業の課題
―田んぼの未来、お米の未来―
9.おわりに
−滋賀県地産地消推進協議会になにを期待するか−