遺伝子組み換え食品〈2〉

遺伝子組み換え食品20年目で分かったこと
なぜゲノム編集技術なのか?


増加する除草剤耐性作物に用いる農薬の種類

 スーパー雑草対策として、農薬の種類も使用量も激増し、次々と除草剤耐性作物が開発されています。  まずグリホサートとグルホシネート耐性作物から始まった。しかし、それぞれに耐性雑草ができてしまった。そうしますと、両者を組み合わせたグリホサートとグルホシネート両耐性の作物をつくる。これに対する耐性雑草ができる。
 そうして、ブロモキシニル耐性、アセト乳酸合成酵素阻害剤耐性、イミダゾリノン系耐性、アリルオキシアルカノエート系、ジカンバ耐性、メソトリオン耐性…いろいろな除草剤耐性作物が今できています。これらは全て農水省が承認した作物です。ですから日本でも栽培OKなのです。ちょうど抗生物質と耐性菌の関係と同じことが起きているのです。

グリホサート(ラウンドアップの主成分)耐性(モンサントなど)
グルホシネート(バスタの主成分)耐性(バイエルン・クロップサイエンスなど)
グリホサート+グルホシネート耐性(モンサントなど)
ブロモキシニル耐性(バイエルン・クロップサイエンス)
アセト乳酸合成酵素阻害剤耐性(デュポン)
アセト乳酸合成酵素阻害剤+グリホサート耐性(デュポン)
イミダゾリノン系耐性(BASF)
アリルオキシアルカノエート系(2,4−Dを含む)耐性(ダウ・ケミカル)
アリルオキシアルカノエート系+グルホシネート耐性(ダウ・ケミカル)
アリルオキシアルカノエート系+グリホサート+グルホシネート耐性(ダウ・ケミカル)
ジカンバ耐性(モンサント)
ジカンバ+グリホサート耐性(モンサント)
ジカンバ+グリホシネート耐性(モンサント)
ジカンバ+グリホサート+グルホシネート耐性(モンサント)
メソトリオン耐性(シンジェンタ)
メソトリオン+グルホシネート耐性(シンジェンタ)
イソキサフルトール+グリホサート耐性(バイエル・クロップサイエンス)

 これらの除草剤の中には、戦争の時に「枯れ葉剤」に使われた農薬が多くあります。
 まずグリホサートです。みなさんご存知の2,4-Dは、2,4,5‐Tと組み合わせて、「オレンジ剤」という名前で、ベトナムの大地にばらまかれました。モンサントのジカンバも枯れ葉剤に使われたものです。
 そういう意味では、戦争と非常に密接に絡んでいる、このような農薬がアメリカの大地を汚染しているわけです。ですからアメリカでもものすごく反対運動が起きました。


日本人が世界で一番高い割合で食べている

 一番食べているのはアメリカ人です。しかし割合から言うと日本人が一番食べています。
 どれくらい食べているかと言うと、トウモロコシは、2014年、アメリカの全トウモロコシ畑の93%が遺伝子組み換えです。日本の自給率は0.0%ですから、日本の食卓に出回る割合は、アメリカ、ブラジル、アルゼンチンを単純に足し算しますと、73.6%。大豆が84.3%。ナタネは89.1%。綿実は94.1%とすごく高いわけです。

日本人が世界で一番高い割合で食べている現実

2014年の作付け割合日本の輸入の割合(2013年) 日本の自給率(2013年) 食卓に回る割合
トウモロコシ(米国) 93%44.8% 0.0% 73.6%
(ブラジル) 68%30.4%    
(アルゼンチン) 85%13.3%    
大豆    (米国) 94%60.1% 6.0% 84.3%
(ブラジル) 88%23.5%    
(カナダ) 88%13.7%    
ナタネ  (カナダ) 95%93.8% 0.0% 89.1%
綿実(食用)(豪州) 99.5% 94.6% 0.0% 94.1%
(1)2014年の作付け割合は、全作付面積の中の遺伝子組み換えの割合
(2)トウモロコシのブラジル、アルゼンチン、大豆のブラジル、カナダ、綿実の豪州の割合は2013年
(出典)ISAAA、米農務省、農水省などより計算


GM作物は、食の安全を脅かしている

 遺伝子組み換え作物が食の安全を脅かしていますが、その要因として3つの問題点があります。
 1つは、除草剤ラウンドアップ(主成分グリホサート)、あるいはグルホシネート(バスタの主成分)の影響です。
 2つ目は、殺虫性作物に含まれる殺虫毒素の影響です。
 3つ目が、遺伝子組み換え作物自体の影響です。
 第3番目の影響ですが、次のようなことが考えられます。除草剤耐性作物は、どうやって除草剤に対する抵抗力を持たせているのかと言うと、侵入してくるグリホサートを分解する酵素が植物内部で作られているのです。農薬の成分を分解する様な酵素なんて、私たちは食べたことがない。それが作物の細胞一つひとつにできるわけですから、その酵素の影響というものも考えないといけない。
 除草剤(ラウンドアップ、バスタ)や、殺虫毒素だけではなく、遺伝子組み換え作物自体の影響も考えないといけません。


クローズアップされたグリホサートの残留

 中でもグリホサートの影響は、先ほど発達障害との関係の中でも、神経毒性を持つということでご紹介しました。
 私たちの体は、神経系と免疫系と内分泌系の3つの機能が連絡を取り合って様々な環境に対応し、維持されています。ですから、神経毒性のある農薬というのは、神経系に影響を及ぼすだけではなく、免疫系とか内分泌系にも影響を及ぼします。免疫系が影響を受けますと、体を守る抵抗力が殺がれますし、アレルギーを起こしやすくなります。脳神経系が影響を受けますと、発達障がい、自律神経失調症等になりやすくなります。内分泌系が影響を受けますと、生殖機能が低下したり、体のバランスが崩れたりします
 例えば甲状腺ホルモンがかく乱されると脳の発達に影響することが、動物実験で確認されています。抗生物質、抗菌剤、殺菌剤は腸の細菌に影響し免疫低下を及ぼしますが、グリホサートは、抗菌剤としても用いられていますから免疫力低下にもつながります。
 日本では3歳児の尿の検査で有機リン系殺虫剤と合成ピレスロイド系殺虫剤を約100%検出しています。ネオニコチノイド系は約80%から見つかっています。これだけ子どもたちの体の中に農薬が入ってきているという現実があります。
 合成ピレスロイド系殺虫剤はかく乱する環境ホルモンとしてリストアップされています。特に今、農薬以外に蚊取り線香も合成ピレスロイド系がよく使われています。
もう一つ、以前、自閉症は遺伝が原因だという説がまことしやかに流れました。それで、子どもが自閉症になった時に「遺伝が原因だ」と言われ、「自分が原因なのか」と苦しんだお母さん方がずいぶんいたのです。ところが自閉症の原因と考えられる決定的な遺伝子は見つかっていないのです。ですから、今ではほぼ間違いなく環境要因だと考えられています。
 有機リン系の除草剤グリホサートが持つ神経毒性の影響も動物実験等ではっきりしてきています。帝京大学の藤井とも子先生がグルホシネートを使って動物実験を行っています。グリホサートとグルホシネーとはほぼ化学構造が同じで、同じような毒性を持っていると見られています。この動物実験例を見ると、母ラットに投与すると、子ラットが尻尾に噛みつく、相手を噛み殺すまで噛み続ける等、凶暴化するのです。
 同時に、WHO専門機関のICRA(国際がん研究機関)が、グリホサートを発がん物質に指定しました。グリホサートはまた、環境ホルモン、内分泌物かく乱物質でもあります。
 それからイギリスのロンドン大学のキングスカレッジがグリホサートで動物実験を行ったところ、非アルコール性脂肪肝になった。これについてEPA(アメリカ環境保護局)の研究者は「ホルモンかく乱の影響ではないか」と指摘しました。


立証される有害性

 先ほどお話しましたが、今アメリカではアレルギーとか発達障害等、子どもたちの健康が悪化しています。「何とかしたい」ということで、「食べ物を変えよう」という運動を「Moms Across America」が始めました。すると、「治った」という例がどんどん出てきて、その報告をホームページに載せています。
 それに対して、モンサント等が「科学的根拠がない」と攻撃をかけてきました。それでお母さんたちは「根拠を示そう」と、グリホサートの検査運動を始めるのです。
 そうしたところ、食品や飼料以外に水道水から見つかりました。尿の場合は全米の子どもたちの8割から見つかりました。母乳からも見つかりました。母乳のケースは非常に顕著でして、食べ物にこだわっている人からはほとんど出ないで、全くこだわっていない人から出たわけです。ワクチンも5種類を検査して、すべてから見つかっています。ワクチンの安定剤として使われるゼラチンは豚由来です。豚の飼料に遺伝子組み換え作物を使っているのです。
 こういうことで、遺伝子組み換え食品の有害性というのはかなり立証されてきました。特にグリホサートとの関係でいろいろ有害性が見つかってきています。
 ジェフリー・M・スミスは、これまで行われてきた数多くの動物実験を精力的に分析して、遺伝子組み換え食品がいかに健康に脅威をもたらすかを立証してきました。2007年、その作業は、一冊の本「遺伝子組み換えルーレット」にまとめられ、その後2012年には、同名の映画も作られました。
 この2008年あたりから動物実験が行われるようになり、かなり成果が出てまいりました。その2008年には、イタリア食品研究所が、殺虫性トウモロコシを使った実験で、免疫細胞に影響が出るというケースも発表されました。ウィーン大学でも同年、殺虫性+除草剤耐性トウモロコシによって、3、4代目のラットの子孫で数の減少と体重の減少が起きていると報告されました。
 ロシアの研究者のイリーナ・ エルマコヴァさんの実験でも、遺伝子組み換え大豆を食べさせてつづけると、3代目、4代目の子孫で、数の減少と体重の減少が起きています。
 2009年、アメリカの環境医学会が過去の動物実験を分析し、ポジションペーパーを発表しました。「そこでは遺伝子組み換え食品を食べさせた動物に、次の3つに影響がみられた」というものでした。「免疫システムへ悪影響が、生殖や出産へ影響が、解毒臓器(肝臓・腎臓)に傷害が」という3つの影響です。
 2011年、カナダ・シャーブルック大学医療センター産科婦人科の調査では、遺伝子組み換え食品に用いる除草剤やその代謝物、殺虫毒素は、妊娠している時の方が体内により多く蓄積し、胎児にも移行すると発表しました。ネオニコチノイド、有機リン系殺虫剤、グリホサート等の農薬の場合、胎盤を通過する。そのため、お母さんから赤ちゃんへ移行してしまうということです。
 2012年に発表された、フランス・カーン大学の動物実験は2年間というラットの寿命の長さに匹敵する長期実験でした。通常は90日です。そこで分かったことは、寿命の短縮(特に雌で顕著)が起きていたことです。
 セラリーニ教授は、モンサントの除草剤耐性トウモロコシとラウンドアップを使用し、それぞれを細かく分けて変化を見ました。通常60〜90匹で行われる実験ですが、200匹も使いました。しかも雄と雌を分けました。雌は大きな腫瘍の発生率が高く、大半が乳がんでした。雄は肝機能障害と腎臓の肥大等、解毒臓器への影響が目立ちました。
 エジプト・タンタ医科大学の研究チームの発表では、殺虫性トウモロコシで腸の粘膜線が破壊される等の損傷が示されました。特に影響を受けたのが十二指腸と回腸の間にある空腸で、組織を損傷し大きく変化させていました。この場合「Bt毒素、殺虫性作物の殺虫毒素の直接的な影響と同時に、腸内細菌の減少による間接的な影響も疑われる」と書かれています。

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