遺伝子組み換え食品〈2〉

遺伝子組み換え食品20年目で分かったこと
なぜゲノム編集技術なのか?

2017年3月29日 京都にて

天笠 啓祐氏
(市民バイオテクノロジー情報室、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン、法政大学講師)

はじめに

 遺伝子組み換え作物の栽培を本格的に開始して20年、いま何が起きているのか?
まず、作物種類が増えています。現在日本で流通している作物は、大豆、トウモロコシ、綿、ナタネの4作物。世界的に見ますとその他にテンサイ、アルファルファ、パパイヤ、ズッキーニ―、スカッシュ(カボチャ)、ナス、ジャガイモ、リンゴ、パイナップル。大半がアメリカで出回っているものですが、日本ではこの4作物以外は出回っていません。なぜ出回らないのか。消費者が反対しているからです。大切なことは、言い続けることだと思います。
 二番目に、新たな農薬の種類と量が増加しました。遺伝子組み換え作物でいろいろな矛盾が生じてきているのです。例えば、除草剤耐性雑草、除草剤に抵抗力を持った雑草がはびこり始めた。その結果農薬の種類や量が増えてきた。
 それから、遺伝子組み換えの鮭が登場しています。アメリカは、魚をほとんど自給していません。アメリカで獲った魚はみんな周辺国で加工しています。遺伝子組み換え鮭もパナマで養殖、加工して今年中にはアメリカで出回ります。そうすると日本にも入ってくる可能性があります。
 四つ目、ゲノム編集技術に代表される新しい生命操作(遺伝子操作)技術が登場しました。
 五つ目、健康被害の拡大です。これはアメリカだけの問題ではありません。日本の食料は圧倒的にアメリカに依存しています。アメリカの問題は、日本の問題でもあるのです。
 六つ目、企業再編の動きが活発になりました。これは遺伝子組み換え作物にいろいろ矛盾が生じてきて「このままいくとどうなるかわからない」と、企業もわかってきたわけです。
 1960年代にレイチェル・カーソンの「沈黙の春」から始まり、70年代には日本でも、有吉佐和子の「複合汚染」が話題となり、環境問題で、「農薬では将来性がない」と、モンサント等の化学企業が「種子」の方に目を向け、遺伝子組み換え作物を開発した。しかし、遺伝子組み換え作物を開発すると農薬が復活し、生産量、消費量が増えて行った。そして、健康被害がひどいことになって限界に来てしまった。「じゃあ、次はなんだ」ということになり、一方でゲノム編集等の新技術の開発、他方で業界再編が起き始めたということです。
 少し、業界再編についてお話すると、バイエルというドイツの会社がモンサントを買収しました。バイエルは、昔からアスピリンなど、製薬企業として有名な総合化学企業です。モンサント等に比べるとはるかに巨大な企業です。モンサントは化学企業ですけど、今は種子に特化しています。
 モンサントは「種子」の分野では世界のシェアが26%のナンバーワン企業、バイエルは3%、合わせると29%です。「農薬」の分野ではモンサント8%、バイエル18%ですから、合わせて26%。種子と農薬の両方で30%近い巨大企業になりました。
 もう一つは、デュポンとダウ・ケミカルの経営統合。デュポンは「種子」が20%、ダウ・ケミカルは4%で、合わせて24%。「農薬」の方は、デュポンが6%、ダウ・ケミカルが10%で、合わせますと16%と巨大化します。
 それから中国国営企業の中国化工集団公司がシンジェンタを買収しました。シンジェンタは世界最大の「農薬」企業でシェアは20%、「種子」も世界第3位です。この中国国営企業は世界中の農業関係企業を買収しまくっていて、将来的に世界支配をねらっているのでは、とかなり心配です。

買収・合併後のシェア 種子 農薬
バイエル、モンサント連合 29% 26%
デュポン、ダウ・ケミカル連合 24% 16%
中国化工集団公司、シンジェンタ連合 8% 20%
(2013年、ETCグループより)

 グローバル化というのは弱肉強食の世界ですから、勝者になるために、どんどん巨大化していく。そういう世界が作り出されています。
 ただ、この合併は三つともまだ正式にOKが出ているわけではありません。企業同士は合意していますが、アメリカにも「独占禁止法」がありますから、今のところ審査が行われている最中です。


脅かされる子どもの健康

 世界中でアレルギーや発達障害の子どもたちが増えており、大きな問題になっています。特にアメリカでは増え方が尋常ではありません。
 そのアメリカで、子どもたちのアレルギーや発達障害を救おうと運動をしている「Moms Across America(アメリカ中のお母さん)」という組織があります。食べものを変える、遺伝子組み換え食品をやめて有機農法の食品に変える。そうすると健康や障害が回復していくという実例が次々に出て、その情報をアメリカ中で共有しあっています。先日そのお母さん方の代表の方が日本に来られて話し合いを持ち、日本でもアメリカのような取り組みをしなければいけないなあと思いました。
 文科省が正式に発達障害の子どもたちの数が増加していることを認め、データを公表しました。15人に1人の割合で、この10年で約5倍も増加しているという数字です。これだけ増え続けているということは異常としか言いようがないわけです。
 この原因とは一体何だろうか。もちろん、日本中で化学物質が増えておりますし、食品添加物の問題もあります。いろいろな原因が考えられますので一概には言えませんけど、やはり一番大きな理由として農薬がクローズアップされています。とくに遺伝子組み換え食品が問題だということになっております。
 遺伝子組み換え食品に用いられる主な農薬は4種類です。
 グリホサート。除草剤ラウンドアップの主成分です。バスタという除草剤の主成分はグルホシネートと言います。アメリカでは、遺伝子組み換え作物にはグリホサートが8割も使われています。ですから、ほとんどの食品から見つかるわけです。
 それから、有機リン系殺虫剤。これは遺伝子組み換え作物以外でも使われています。アメリカでは子どもたちのほぼ全員の尿から見つかっています。
ネオニコチノイド系の殺虫剤。この殺虫剤は種子の消毒に使っています。
 この四つの農薬には特徴がありまして、いずれも神経毒性が強いのです。子どもの脳を直撃します。神経細胞には「シナプス」と言いまして継ぎ目があります。この継ぎ目を通して赤ちゃんの時期などにはどんどん増えていくのです。胎児・赤ちゃん小さい子どもの時はどんどん増殖していきますが、歳を取ってきますと逆にコントロールされ、いらない物はだんだんそぎ落とされて小さくなっていきます。ですから、農薬で汚染されていると、成長の時期にある子どもの脳を直撃し、神経細胞の増殖が阻害されてしまうのです。
 小さい時期がとくに問題なのは、脳というのは大事な臓器ですから、大人の場合は脳関門というものがあって、脳の中の有害なものが入らないように血管に関門があります。だけど、赤ちゃんの時、胎児の時はまだ未形成で、脳関門を通過して有害なものも入ってしまうのです。そして神経細胞の形成に大きく影響を及ぼしてしまう。
 ですから、この神経毒性のある農薬の汚染が食べ物を介して広がると、大変な問題になる。これがいま起きている問題です。

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