『豆腐百珍』その六「絶品」

 「絶品」は、『豆腐百珍』の凡例によれば、「妙品よりもさらに秀れたものです。奇品や妙品はおいしのですが、うますぎるきらいが、ないでもありません。絶品は珍奇にたよらず、豆腐の真の味を伝える、絶妙の調和がとれた料理です。豆腐を好まれる方は、ここまで味わっていただきたいものです」とある。何としても豆腐党としては挑戦しなければならない豆腐料理である。「絶品」は94番から百まで七品。すでに「百番・真のうどんとうふ」は、最初の『豆腐百珍』で紹介済みなので九十九番まで紹介し、コメントを加えよう。
豆腐百珍
絶品の豆腐料理メニュー
94番
「油揚(あげ)ながし」
 「豆腐を適当な大きさに切り、胡麻の油で揚げます。揚げるとすぐに水に入れ、油気をとります。別に葛湯を煮えだたせておき、油
抜きした豆腐をいれます。豆腐が浮き上がろうとするところをすくい上げ、わさび味噌をつけます」。
 「わさび味噌」の作り方は「味噌に白胡麻、胡桃(くるみ)をよくすり合わせて混ぜ、おろしわさびを加えます」とある。
 「油揚ながし」はまさに絶品、本当においし
い、贅沢な豆腐料理。ポイントは胡麻油で揚げる揚げ方にある。豆腐がすこし茶色くなりかけた頃をみはらかって揚げる。えごま油をつかえばさらに香りがよくなる。「わさび味噌」はいろいろ工夫して自分に合ったタレで頂くと何倍もおいしくたのしめる。
95番
「辛味(からみ)とうふ」
 「かつおのだし汁に、うす醤油で味をつけ、おろし生姜(しょうが)をたくさんいれます。たっぷりしただし汁で豆腐を一日中たきます。豆腐一丁につき、よく太った一握りほどの生姜を十個ほどおろしていれるとよいでしょう」とある。ポイントは、濃口醤油を使わず薄口を使うことと、生姜をたくさん使うこと。時間がかかるが風邪を引いた時に、玉子酒とともに頂くとよい。
96番
「礫(つぶて)でんがく」
 「豆腐を八分角(3センチたらず)、厚さ四、五分(約1.5センチ)に切り、串に三つづつ刺して、キツネ色に焼きます。焼けると串を抜いて、楽焼きの蓋茶碗に入れ、からし酢味噌をかけ、芥子をふりかけます」とある。このでんがくは旨い。酒の肴としても絶品。
97番
「湯やっこ」
 「豆腐を八、九分(3センチたらず)の大きな采(さい)の目に切るか、もしくは拍子木(ひようしぎ)のように七分(約2センチ)四辺、長さ一寸二、三分(約3.5センチ)の大きさに切ります。葛湯をよく沸騰させて、豆腐一人前をいれ、蓋をせずに見ておきます。豆腐が動きだし、浮き上がろうとするとこ
ろですくい上げて器に盛ります。豆腐が浮き上がってしまってからでは、よくありません。手っとりばやくすることが大切です。器も温めておくとよいでしょう。
 醤油を煮ただせ、花かつおを入れ、湯を少しさして、もう一度煮だたせます。これを絹の布でこし猪口に入れ、ネギの白根のきざみ、大根おろし、とうがらしの粉を入れます。
 京都では、これを湯どうふと言い、大阪では湯やっこと言います。豆腐の調理法では第一級品と言えます。
古い調理法では、米のとぎみずで煮るところもありますが、葛湯には及びません」とある。まさに、贅沢な「第一級の湯どうふ」である。ポイントは、葛湯を使うことと、豆腐の揚げ方にある。豆腐が浮き上がらないように注意すること。「葛湯の湯どうふ」を頂くと他の「湯どうふ」は足元にも及ばない。奈良に葛生産農家の卒業生がいて、本葛を届けてくれるため、冬は本格的な「葛の湯どうふ」を愉しませてもらう。わが家にも至福の時が流れる。ありがたいことだと感謝している。
98番
「雪消飯(ゆきげめし」
 「豆腐を『真のうどん豆腐』(100番で初回参照)と同様にところ天のつき出し器で切り、水6、酒1を混ぜて煮てから、醤油1を加えてさらに煮返した中に豆腐を入れ、浮き上がろうとするところをすくい上げます。
 温めておいた小さな飯茶碗に入れ、大根おろしをかけ、湯とり飯をよそって出します。口の中でとろりと消えるような風味で、これも一級品です。
 湯とり飯は、もっとも上質のご飯を炊いて、沸騰した湯に入れてかき混ぜます。これをざるで上げ、また元の釜に入れ、火の気の残っているかまどでよくうませたものです」とある。これも贅沢な豆腐料理。ポイントは「湯とり飯」の作り方にある。電気釜やガス釜では「火の気の残っているかまどでよくうます」ことが難しい。そこで、「ザルで上げた湯どうし飯」を電気釜かガス釜にもどして「保温」のスイッチをいれればよい。食欲の無いときにはいくらでもご飯が食べれる優れ豆腐料理である。子供から年寄りまで喜ぶ絶品。
99番
「鞍馬とうふ」
 「豆腐一丁を二つに切り、油で揚げたあと、揚げ皮をむき取り丸い形にします。これを湯で煮て梅味噌をかけ、芥子や胡麻をふりかけます。また酒、うす醤油で煮て、すり山椒をかけるのもよいでしょう」とある。挑戦したい豆腐料理。