『豆腐百珍』その弐「尋常品」

 江戸時代の珍本『豆腐百珍』について初回では、「現代訳」からその概要を紹介した。これからは、その個別メニューを現代の暮らしに役立てたいと私が思うものを紹介していこう。
 「その弐」は「尋常品26点」から初回に紹介した1番「木の芽田楽」をのぞいて主要なものを拾ってみた。「」内は原文。説明や注釈は筆者。
豆腐百珍
尋常品の豆腐料理メニュー
2番
「雉やきでんがく」
 「豆腐をきつね色に焼き、煮かえし醤油を入れた猪口(さかずき)に、柚を添えて出します」。料理が簡単でなかなか乙な味で酒の肴としてもいける。
3番
「あらかね豆腐」
 「豆腐の水をよく切り、手でつかみ崩してから、油を使わずに、お酒と醤油でいためます。これにすり山椒を加えます」。わが家では、赤く実った山椒の実を冷蔵庫の冷凍室に保存しておいて、必要なだけ出してすり鉢ですって使っている。
4番
「むすびとうふ」
 「豆腐を細かく切って、酢につけてお握りのように結びます。結ぶと水に入れて酢気をとります。味付けはお好みによります」。一度試してみようと思っている。
5番
「ハンペンとうふ」
 「ながいもをよくすり、豆腐の水をよく切って、ほぼ同じ量をよくすりまぜます。丸く固めて美濃紙に包み、湯でにます。味付けはお好みによります。別名『白玉豆腐』とも呼ばれています」。
6番
「高津湯とうふ」
 「絹ごし豆腐をゆでて、熱い葛をあんかけにし、芥子を添えます。これを『南禅寺』とも言います」。本葛を使いたい。
7番
「草の八杯とうふ」
 「豆腐を太いうどんのように切って、これに醤油と酒で味をつけます。葛をかけ、おろし人参をそえます」。固めの木綿豆腐を選んで挑戦してみよう。
8番
「草のケンチエン」
 「くり、皮ごぼうをごく細く切り、きくらげ、麩もほそく切って、芹(ないときは青葉)をみじん切りにします。ぎんなんを二つ割りにします。この六種類の具を油で炒ため、すり豆腐と混ぜます。板の上に、この具を四、五分(約1.5センチ)の暑さに広げて巻きつけ、干瓢でくくります。これを醤油と酒で味付けします」。
9番
「霰とうふ」
 「豆腐の水をよく切って、サイコロ状に切り、ザルに入れて振り、角をとってから油でさっと揚げます。味付けはお好みによります。豆腐をやや大きめにしたものを『松露豆腐』ともいいます」。天ぷらの一品に加えたい。
10番
「雷とうふ」
 「胡麻の油を炒って、それにくだいた豆腐を入れ、すぐに醤油をさして味付けをします。ねぎの白根のざくざく切り、大根おろしやわさびを入れます。すり山椒を入れてもよろしい。『南京とうふ』ともいいます」。
11番
「再火でんがく」
 「豆腐を適当な大きさに切り、醤油のつけ焼きにしたあと、少しかわかす。かわくと味噌をつけてもう一度焼きます。焼き加減が大切で、二度ともあまり焼きすぎてはいけません」。
14番
「すり流しとうふ」
 「豆腐に葛粉をまぜてよくすり、みそ汁の中へすりながら流し込む」。
15番
「おしとうふ」
 「豆腐を布に包んで、ややななめにおいた板の上に並べます。豆腐が押しつぶされないほどの押し石をかけ、水気をよくしぼります。そのあと、醤油、酒などで煮しめてから、小さく切ります」。
18番
「しき味噌とうふ」
 「茶碗をよく暖めておき、温めたワサビ味噌を茶碗の底に敷き、さらにその上に花かつおをおきます。おぼろにした豆腐を湯で煮て、あみじゃくしですくい盛ります」。
20番
「濃醤」
 豆腐一丁を四つほどに切り、全部一つのお椀にいれます。出す時に、山椒の粉の上にこんもりと花かつを置きます。しょうゆの味でたべます」。
21番
「ふわふわとうふ」
 「鶏卵ととうふのほぼ同量をまぜ、よくすってから、ふわふわ煮にします。それに胡椒をふりかけます。鶏卵は(豆腐と混ぜたたことで)ふわふわとし、風味は変わることがありません」。
22番
「松重とうふ」
 「器に海苔を敷き、すり豆腐に鶏卵の白身をつなぎに入れ、海苔の上にのばしてしきつめ、蒸してお好みの味をつけます。お好きな形に切ってお楽しみください」。
25番
「よせとうふ」
 「おぼろ豆腐を手ごろの大きさに丸め、美濃紙に包んで、湯でさっと煮ます。味付けはお好みによります」。
26番
「鶏卵とうふ」
 「豆腐の水をよくしぼり、葛粉をつなぎに加えてすり、少し固めにします。しんのない上質のにんじんを丸むきにして柔らかく煮ます。これをすり豆腐で包み、さらに上に竹の皮をまいて、湯で煮てから片端から切ってゆきます。味付けはお好みによります。にんじんの代わりに、サツマイモを使ってもよろしい」。女性好みの豆腐料理。