大阪で出版された『豆腐百珍』

 『豆腐百珍』は、天明2年1782年、今からちょうど220年前に大阪高麗橋一丁目の藤屋善七が出版している。編者は「何必醇」とある。板行されると一躍ベストセラーになり何度も版を重ねた。さらに、天明3年には続編が板行されている。
 豆腐調理法は、「尋常品」「通品」「佳品」「奇品」「妙品」「絶品」の六種類にわけて100品の調理法が説明されている。
豆腐百珍1
百種類の豆腐料理メニュー
 それでは『豆腐百珍』の100品の豆腐料理を紹介しよう。
尋常品
 「尋常品」は26品、家庭で比較的よく料理されるもので、その調理の秘訣をすべて掲載されている。
 たとえば一番の「木の芽田楽」は、「暖かいお湯を大きな器に入れ、湯の中で豆腐を切ったり、串に刺します。やわらかい豆腐でも心配ありません。湯から引き上げて、すぐに火にかけます。味噌に木の芽を入れ、甘酒をほんの少し加えると、味がよくなります。甘酒は入れすぎると、甘すぎてかえってよくありません。この味噌を豆腐にかけて食べます」。
通品
 「通品」は10品で、最もポピュラーな料理法で、調理に秘訣といったこともないので、調理法ははぶき、その名称だけを掲げている。
27番「灸とうふ」、28番「油揚とうふ」、29番「軟とうふ」(おぼろとうふ)、30番「絹ごしとうふ」、31番「油揚でんがく」、32番「ちくわとうふ」、33番「青まめとうふ」、34番「やっことうふ」、35番「葛でんがく、祇園とうふ」、36番「「赤みそのしき味噌とうふ」。
佳品
 「佳品」は19品で、その風味が尋常品よりややすぐれ、形も美しいもの。
 たとえば37番「なじみとうふ」は「上質の白味噌をよくすり、酒で中ぐらいの薄さにのばします。適当な大きさに切った豆腐をその中に二時間ほど浸したあと、そのまま中火にかけ煮たてます。ネギの白根のきざみ、青とうがらし、大根おろしを添えます」。
気品
 「奇品」は18品で、一風かわっていて、人のなかなか気づかない調理法。
 たとえば57番「蜆もどき」は「豆腐を丸ごと、水気なしでトロ火で煮ます。豆腐から出た水分をスプーンですくい取ります。何度も繰り返して、豆腐がポロポロになり、蜆の身のようになったところを、油でさっと揚げます。山椒を添えます」。
妙品
 「妙品」は18品で、やや奇品にまさるもので、形・おいしさの二つを兼ねそなえたもの。
 たとえば37番「なじみとうふ」は「上質の白味噌をよくすり、酒で中ぐらいの薄さにのばします。適当な大きさに切った豆腐をその中に二時間ほど浸したあと、そのまま中火にかけ煮たてます。ネギの白根のきざみ、青とうがらし、大根おろしを添えます」。
絶品
 「絶品」は96番から百番までの7品で、妙品よりもさらにすぐれたもので、絶品は珍奇にたよらず、豆腐の真の味を伝える、絶妙の調和がとれた料理。
 たとえば百番「真のうどんとうふ」は、「鍋を二つ並べて、両方とも湯をよくたぎらせておきます。切った豆腐をあみ杓子ですくい、一方も鍋に杓子に豆腐をつけます。温まるとすぐに上げ、別に温めておいた器によそい、もう一方の鍋のにえたぎった湯を、器にそそぎ入れます。煮るよりも、不思議なほど煮加減は少しも変わりません。つけ汁は、しょう油1.8リットルと酒0.54リットル、だし汁0.9リットル、を煮返します。これを中猪口に入れ、大根おろし、とうがらしの粉、ネギの白根のみじん切り、ミカンの皮、浅草のりを薬味として添えます。薬味は胡椒一種でもよろしい。略」。