命の洗濯・そば
 家族4人が、田舎に墓参りで帰ったついでに寄り道をして、綾部市上八田の『そばの花』を訪ねた。府道物部梅迫線の山あいの道路ぶちにひっそりと佇む茅葺の民家が店。畳みの三間は、すでに四組の客でいっぱい。土間のテーブル席に準備されていた。友人の店主・村上君が福井のそばを実から挽いて打ってくれた十割そば(そばのみ)、元そば8・2(皮ごと挽いたそば8割)、剥身そば8・2(皮を剥いだそば8割)の3種類のそばをざるでいただく。何ともいえぬ新そばの香りと風味、それに細めに裁断したそばは、10割そばであれ8割そばであれ、京都では味わえないのぞごしに堪能した。また「そば湯」が別格。それに冷の地酒と相性が良い。農協の管理職を早く退職し、信州の本場で修業したプロ職人のそばを愉しみ、久々に命の洗濯をさせていただいた。遠くからわざわざこの山村の『そばの花』を訪ねるお客の気持ちが判るような気がした。日本人のそば好きは有名で、そば通も多い。昔から山村住民にとってそばは、命の綱であるとともに晴れの料理の一品であったし、現代では栄養豊富な健康食でもある。豊富に含まれるルチンは脳卒中を予防し、肝臓の特効薬、カリウムと良質のタンパク質を多く含み肥満予防に効果がある。「そば湯」を必ず食することが鍵。私は、「そばかき」を注文し、そばそのもの味を愉しむ。(注・渡辺)
現代の『百珍本』・『そば百楽』
 『そば百楽』は、江戸時代の『百珍本』ではなく、現代の『百珍本』。京友禅の道一筋の染色工芸家で人間国宝の羽田登喜男氏が、「呉服の展示会や店で出してきたそば懐石料理を整理した」とある。作者は堀部欣也氏。京のそば処田毎(たごと・明治2年創業)の次男として1943年に生まれ、1972年に京都洛北に“そもじ庵”「田ごと」を開業し、1988年に全国そばメニューコンテスト優秀賞に輝いたそば名人。『そば百楽』は、そばの基本編「関西のだし、関東のしる」「だし汁の種類」「つけ汁のつくり方」「かけ汁のつくり方」「そばづくり」「家庭でそばづくり」「みそぎそば」と、「創作そば編」15メニュー、「つくりおきコーナー編」6点、「そば雑学」、それに「注文で届く材料店のご紹介」、「そばの詩と版画」で構成されていて、そば通のみならず、われわれ素人にも楽しくためになる「百楽本」である。そのいくつかを紹介し、他は次回に譲る。
「そばづくり」と「家庭でのそば造り」
 そば粉(7)つなぎ(強力粉3)をふるいにかけ、木ばちの中でよくかきまぜる。氷を合わせ粉1kgに対して3〜4個を入れよくかき回す。氷がかなり小さくなった頃、少し水を加える。耳たぶくらいのかたさの感じが出てきたら、そば玉にしあげてゆく。家庭でのそば造りはそば粉・5、つなぎ・5から始める方が無難。麺棒でそば玉をのばして大きく丸くのばしながら長方形にしあげてゆく。この時、打ち粉を用意して麺体がひっつかないようにする。
「創作そば」15品
 「いなりそば」「ぐじむしつくね合えそば」「巣ごもりそば」「田ごとの月」「生ゆばそば」「じゅんさいそば」「そば米」「そばしゃぶ」「サラダ風味のゆば巻きそば」「そば焼売(しゅまい)」「そば菓子」「京のおばん菜のあげ巻き」「そば畑(メルヘン世界のそば畑)」「のり巻き(お茶人好みのそばずし)」「椀ものにそばの具」。作り方は次回のお楽しみ。