日本の伝統食を考えよう

■伝統食の定義

 「伝統食とは」、特に「日本の伝統食の特質と優位性」について、私たちの会の20年の活動でまとめさせていただきました到達点がございます。
 まず「日本の伝統食とは」という私どもの会の見解であります。
 日本人が昔から食べつないできた、食べ物と食べ方の全てであって、時代と地域と階層によって違いがありながらも、日本の風土に根ざしながら今日まで継続してきたものというふうにさせていただきました。
 学習会なんかにまいりますと、「宮本さんとこが言うてくれる昔からとはいつのことや」、「元禄時代なのか、最近のことなのか、卑弥呼さんの時なのか」とか、いろいろあるのですけど、学問的にはいろんな言い方もあるのですけれども、運動体といたしましは、やはり縄文が、日本の文化、食だけではなく、衣食住全ての文化の基礎と言いますか、ことの起こりですね。縄文から前になりましたら、ちょっと考えるのも、資料も大変なので、縄文時代からということぐらいを起点にしたらどうかというところです。
 ですから、「昔から食べつないできた、食べ物と食べ方の全て」。そして、「時代と地域と階層によって伝統食が違う」。時代、地域、階層この3つの違いがありながらも、「日本の風土に根ざしながら」というところが非常に大事になっております。今、おふくろの味と言いながら、輸入物で作って、並べたりしておりますけれども、やはり日本の風土に根ざすというところが非常に大事だと思います。
 1988年8月25日付けの日本経済新聞に、「想像を超えた縄文人の食文化」「豊かな知識、多彩な調理」という國學院大學小林辰夫教授の署名記事が出ております。
 縄文人は何を食べていたか。この記事によりますと、獣類は猪とか鹿とかを一番好んでおりましたし、カモシカ、ウサギ、狸、狐、ムササビ、狼、大山猫など60種類以上にも上るものを食べております。その他、雁、鴨、雉、鶴なども食べていたということです。
 海の魚についても、黒鯛、スズキ、ブリ、鯖、マグロ、カツオ、ハモ、アカエイなど70種ぐらい、毒性の強い河豚もこだわっていたと書いています。
 それから貝類、貝塚というものがありますから、よく食べておりますが、貝類は300種類以上を数えることができる。
 植物性のものは、まだ米は作っておりませんで、最近では縄文の終わりごろには作り出、していたというふうな説も出てきておりますが、堅果類が60種類ぐらい。栗、胡桃、栃、後は、ぶどう、菱、くわい、マコモ、リョクトウ、瓢箪、エゴマそういうものをいろいろ食べて込んできておりました。流通がうまく言っておりませんから、量的には不足していたとは思いますが、うまくそれを食べつないできているわけですね。

■伝統と食の特質

 その伝統食の特質は、6点に分けてまとめています。
 最初の特質は、「米が主食となった」ということです。なぜ米が主食となったかと言いますと、暖かくて湿気が多くて、夏季には高温になって、稲作に必要な水と太陽に恵まれて、連作可能な水田で米の多収穫が可能であったということです。更に米は栄養に富む上、おいしく、貯蔵に耐え得たということです。
 2番目には、日本の自然環境を生かした食材料。四面が海で弓なりの地形で、四季がありますから、魚、豆、野菜、海藻が豊富にあります。自然環境を生かした食の材料で、新鮮さを身上とするおかずをたくさんつくりだした。つまり、ご飯があっておかずがあるという食べ方ですね。それが2番目の特質です。
 3番目は世界有数の発酵食品の宝庫でありまして、その他、乾物、干ものなども多い。保存食品と発酵食品は違いますが、いずれにしましても、そういうふうなものを豊かに作り出して、活用しまして、体に良くておいしいものを食べてきているというわけです。
 4番目は、文化としてのお茶をつくり出したということです。お茶は二千年少し前に中国から入ってきておりますが、単に飲むだけでなくて、茶と、お花、そういう楽しみ方を文化として高めてきたということですね。
 5番目には、米食と外来の食文化を融合させた。中華料理も、西洋料理も、いわゆるアジア一般の食も非常に米とよく合いますので、ご飯とおかずというふうに食べることで、食卓の食べ幅を広げ、豊かにしてきた。
 6番目には、箸とお椀の文化を生み出したということがあります。

■伝統食の優位性と問題点

 この6つの特質の評価ですが、良い点が4つ、困る点が1つというふうに考えています。
 1番目に、高い栄養学的評価。伝統食は、栄養学的に非常に高い評価を得ています。1983年の日本栄養食料学会で、学問的にキチッと健康上の利点があるということが証明されております。そして、10年送れて1993年には、やはり健康と長寿との日本食の関わりというのが、WHO(世界保健機構)でも認められて、高い評価を得たということがあります。体に良い、健康に良いということがまず高い評価ですね。
 2番目に、良好な栄養バランスを保つ食事法です。栄養学的に良いということと、その栄養学的な評価を生かす食べ方があったというのが2番目です。主食と副食を交互に口に運ぶ食べ方が、でんぷん質比率を高め、タンパク質と脂肪の過剰な摂取を防ぐ。
 つまり、真ん中にいつもご飯が主食としてありますので、ご飯一口、おかず一口。この食べ方が知らぬ間に栄養バランスを取る食べ方につながって健康上非常によかった。大体今の栄養学で主食は5割から6割、毎日入っていくと栄養バランスが良いと言いますので、一口一口の交互食べをやっておりましたら、知らぬ間にそういう作法が健康に導いたということがいえると思うのです。今の子どもは好きなおかずだけ食べてね、後ご飯は残してふりかけでちょっと食べる。これは日本の本当の食べ方にそぐわないのですね。
 3番目に、生活習慣病予防の役割。大豆はアメリカ、カナダなどでは「搾油用」専門なのです。しかし日本は味噌、醤油、納豆、いろんな食べ方で、文化的に非常に優れた食べ方なのです。豆、特に大豆とその製品、お茶、緑黄色野菜、そういう利用度が高くて、そして低脂肪ですね。
 アメリカは主食というものがない。おかずご飯の区別なしに、朝から晩まで、肉類が中心にならざるを得ないのです。それはソーセージになったり、ステーキになったりしますけれども、野菜とか、海藻なんか特に食べませんしね。そういう点で日本は、生活習慣病を予防していくものが日常食になってきたという点で非常に評価されるところです。
 次には自給率ですね。伝統食を食べておりましたら、日本の自給率の向上に貢献しているということが言えると思います。
 こういうふうな4つの良い点の優位性がありながらも、困る点としては塩分過剰の習慣、これは批判的に継承すべきというふうに書いてあります。
 米は塩がよく合いますので、高血圧とか生活習慣病などで「減塩をしろ」と言われたら本当にしんどいです。国民栄養調査をみましても、10グラムぐらいでとめてほしいと言うのですが、12、3グラムと大阪などは食塩の摂り方が多いです。それは、加工食品の利用率が高いと言われているのですが。塩分過剰はどうしても避けられません。特にこの頃東北なんかが塩分の摂りかたを抑える指導をしておりまして、成果を上げております。
 最後に食生活の基本として、自分の居住する地域で生産された安全で新鮮な旬のものを自らの手で調理加工して食べる。これは「ようしない。できない」とか言いましても、ここの基本が座っておりませんと、伝統食のよさを生かすことはできなし、日本の食の向上というのはどうしても無理になってきます。

2.伝統食とは
−とくに日本の伝統食の特質と優位性について−