日本の伝統食を考えよう
揺れ動く農政の行方をどう読むか

 実は今日、世界一の長寿の本郷かまとさんが116歳で亡くなられたということが新聞に出ていました。そのようなことで「今なぜ伝統食なのか」ということから始めさせていただきます。
 今年の9月、65歳以上の男性も1千万人突破し男性を含めて日本が長寿国になってまいりました。良薬ができたとか、医療技術の進歩とか、環境を優先する政治もぼつぼつすすんでおりますし、乳幼児の死亡率が減ってまいりましたし、問題はありますが健康保険制度が完備される中で、世界的に長寿の傾向にはあるのですが、しかし日本が世界の最長寿国になったのは食事内容にあるという評価が、世界の同意を得たことが最近の特徴です。
 京都大学名誉教授 家森幸男先生が何十カ国も回って、「かつては日本の食が健康との関係では世界一だと言ってきた。けれども、地中海食を経験している人たちから、我々も同じような効果があるものを食べて、長寿、健康であると声がかかって、今では、日本食が最高ではなくて、双璧となっている」と言われたことがあります。しかし、日本人の食事内容の優位性がはっきりしてきて、世界的な同意を得るようになってきたのは事実です。
 日本の和食というのは、伝統的にずうっと米が主食であるということ。日本は主食を持っている国であるということですね。米を主食として、魚と大豆と野菜と海藻。これを食材としてきた。私は「五つの優れもの」と言っているのですよ。そして、その食材を生かす調理技術というのはすごく多彩で、そして優秀なのですね。
 これは後で話しますが、「伝統食列車」なんかで全国各地行きましたら、すごい牛蒡があったり、地元の人でも「こんなん食べたことなかった」という例があって、目立ちもしないけど、死にもしないで、そして厳然として継続しているような郷土食があちこちに、多くはありませんけれども、根づいてまだ残っています。しかも調理法が多様で、季節とか、地域性とかをしっかり重視した食べ方というのが、まだまだ伝統食として残っている。そのへんが日本の強みで、健康との関係は言うに及ばず、そのことが自給率を上げていくということにもなりますし、食の文化もますます豊かにして行こうとすれば行ける。そういうものを豊かにしっかり持っているという点が言えると思うのです。
 したがいまして、今非常に混乱した問題の多い食生活の中で、世界的に見ましても伝統食というのはそれぞれ各国であるわけですね。そして、自国の伝統食を見直したり、復活させたりしたいという動きは世界的な流れになってきているわけです。
 今、食べ物はあふれるほどありまして、お金を出せばなんでも手に入ります。この間テレビを見ていましたら、100万円のおせち料理を売り出され、材料費は大体20万ぐらいで、後は重箱に80万円ぐらい使ったと言うておりました。「ついにここまで来たか」いう状況でして、本当に日本人が本来食べ繋いできた伝統食というものの影が薄 特に、今本当に大事になってきておりますのは、「作り手さん」(お料理をつくられる方や、生産者も含めまして素材を作ってくださる方)に対する、「食べ手」の力、食べている方の意識とか、力とかが、非常に大事になってきているのではないかなと思っております。食の現状に対するいろいろな分析はあるのですが、それではどうすればいいのか」ということになると中々足が出にくい。私は「食べ手」の方もつかまえましたら、また一歩も二歩も食の運動が発展していくのではないかと思っております。
 そのためには「急がば回れ」ということわざもありますように、こうした学習したり、現状を調べたりして、それぞれのあまり目立たない動きをつないでいきまして、この食の状況に対して一つの力を持って、そしてそれぞれの国の伝統の食べ物の食べ方を受け継ぎ発展させていくということにつなげていったらいいのではないかなと思っております。
1.いま、なぜ伝統食なのか
−食をとりまく今日の問題点及び「伝統食の見直しと復権」が世界的な流れになりつつある情勢を考える−