地域の特性を大事にする。

 今「もう一回原点に帰ろう」という動きが世界中で起こってきています。
 イギリスは1980年代からサルモネラ食中毒や狂牛病などの問題が吹き出たのですね。イギリスはかつて世界の大帝国で、植民地で生産して国を維持していました。そのもともと持っていた帝国主義に依拠した食料生産システムに無理が来ていたところがあったと思います。
 そのイギリスで今、もう一回産地を大事にしていこう。コーヒーやニット製品など、たとえ外国から輸入するものでも、産地を保護したフェアートレードで価格を保証して再生産可能な農業をしていこうという芽が出て、静かに広がってきています。
 キューバでも、砂糖生産一辺倒という昔の植民地的なプランテーション方式から、自給型、複合型の有機農業生産方式に切り替える中で元気を取り戻してきているわけです。
 それから、イタリアの村から始まったスローフード。特にワイン、チーズを中心にした、地域の食材を大事にしていこうという動きも世界中に広がりつつある。日本でもスローフード協会ができてき

ています。
 例えばイヌイット、アンデスや南米やアフリカの人々も、自分たちの食べ物が大きく変わったときには、若者達が荒れるのですね。生きがいを失って自殺も増えますし、若者が夢を失ってしまう。日本も自分の足元の文化がガタガタ。今若者が生きる夢を失っている。地域の文化は、単に食だけでなく自分の生き方も含めて大事な拠り所ですし、基盤なのですね。その文化を失うことは非常に怖いことであるということを、もう一回見直したいなと思います。
 県の伝統食文化調査で、竜王町で1年間調査に入った時、竜王町は虫送りや地蔵盆など、まだまだ子どもだけのお祭とか、子ども達だけでやる文化が残っていたのですね。これだからこそ子どもが、その地域が元気なのだなあと思いました。自分はここで生まれて、こういうものを食べて、こういうふうに生きてきたのだというものを持っている子どもは何か違うような気がします。中国に行っても、タイへ行っても、経済的には貧しいかも知れないけれども、子どもの目の輝きは日本の子どもと全然違います。日本の子どもはスマートできれいで、賢そうに見えますけど、なんか目の輝きがないですね。向こうは元気です。タイへ去年行きました時も、小さい子が一人前の顔をして、さらに小さい子を連れて教えながら川で投網しているのですね。
 その辺のところも含めて、もう一回食文化だけじゃなくて、全体の文化を、地域の文化を見直すことが必要ではないかと思います。(つづく)
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